介護事業者のための就業規則

介護事業者向けの就業規則 H26.9.25 山田社労士事務所
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『介護事業者の就業規則は、介護事業者特有の労務管理上の課題を踏まえた内容で作成しましょう」

介護事業者のための就業規則は、どのようなポイントに注意をすべきなのでしょうか。

当事務所が、数多くのディサービス等の介護事業者の就業規則の策定支援を通じて、介護事業者の就業規則における注意点を出し惜しみ無く解説しています。

【はじめに】

事業者は、事業の適正な運営のために、就業時のルールを定めて従業員に履行させます。

「絶対におこなってはいけないこと」を服務規律に明確に記載しておくことで、事業所の企業秩序の維持、不正を未然に防ぎます。万が一不正が生じた場合には、懲罰の発令により企業秩序を維持を目指します。

処遇面においては、事業者は従業員の貢献に対して、給与(月例給与、賞与、退職金)を中心として、その他の処遇(福利厚生・表彰・教育訓練等)を通じた誘因により、従業員の動機付けを狙います。

就業規則を作成する際には、雛形を活用して作成するケースが多いと思われますが、後述の介護事業者の労務管理の課題や自社の実情に照らして、不適合事項が無いかを慎重に判断して作成します。

概して言えば、「①事業の適正な運営」と「②職場秩序維持」と「③従業員の動機付け」という3点が少なくとも、クリアでき、かつ法令に違反していないか?という点で作成していきます。

例えば少人数の事業場では、1人が抱く不満要因は、他の従業員にとっても、共通の不満要因であることが珍しくありません。

最悪のケースでは、事業所vs従業員のような対立構造を生んでしまい、事業運営に支障をきたすようなケースは絶対に生じさせてはなりません。いかに職業倫理が高く、介護という仕事に対して使命に満ちていても、不満と満足という感情を持つ人であることを強く意識して、利用者さんに対するサービスを高い水準で保持できるような従業員満足度を意識した処遇バランスを検討する必要があります。

近年、介護ワーカーの方は、非常に労働条件に対する権利意識が高くなっており、介護労働者ユニオンの加入者数も増えていることから、労使トラブルの発生頻度が多い業界の一つです。

このような環境変化も踏まえて、自社に適した就業規則を整備することが事業所の健全な中長期の発展にも不可欠です。

【介護事業者のための就業規則】

介護事業者の指定申請の際に、就業規則が添付書類になっているケースがあります。
このような事情から、法律上は作成義務の無い、常時10人未満の事業場でも就業規則が作成されていることが珍しくありません。

しかしながら、介護事業者のために作られたものではなかったり、開設者が勤務していた介護事業者で使われていたものを、そのまま流用していることが多いため、実情に即していない就業規則を目の当たりにする事が多いです。

【介護事業所ならではの就業規則のポイント 総論編】

介護施設では、高い職業倫理と使命感に満ちた、介護ワーカーの方が数多く活躍をされています。

しかし、現実には介護労働の現場は、精神的にも肉体的にも過酷な現場であり、従業員が、うつ病等のメンタルヘルス疾患を抱えてしまう事も決して、珍しくはありません。このようなケアにも気を配る必要があります。

このような状況からも、現状よりも、少しでも労働環境の良い職場を求めて、転職を繰り返す方が非常に多いことから、離職率が高い事業者が多いです。
事業者側としては、人員の採用には、当然に採用コストがかかるほか、再教育にも時間とコストを要します。

最悪の状況としては、突然の離職により、指定基準(人員基準)を満たせず、事業所の運営ができない状況に至るケースもあります。このような状況を避けるためには、どうすべきか就業規則の作成を通じて十分に検討していきます。

また、多くの介護ワーカーは、日進月歩の新しい介護技術を取得を希望されていることが多いのが特徴です。

中長期的に健全に事業所が成長していくためには、このような実情を踏まえて、いかにして、優秀なスタッフを確保し、定着率の向上を実現していくかも、就業規則作成時のポイントです。後述しますが、このような課題解決のために、介護事業者が活用できる公的助成金(中小企業労働環境向上奨励金)があります。

【介護事業者のための就業規則 詳細編】

ア)就業ルールの明確化
始業や終業の時刻や休憩、休日のルールを明確化することで、正常な事業運営と従業員が安心して働く事ができるようになります。
とりわけ介護事業者では、運営基準(人員基準)に沿って、適正なサービスを提供する義務が生じますので、人員基準を守りながら、適正なシフトパターンを設計していくこと等が求められます。

主な記載事項)
始業・終業時刻や休憩時間等のシフトパターン、休憩、休日、休暇、災害補償など
給与(諸手当)の種類と支給基準、閉め日と支払日、昇給基準、有給休暇や育児休業等の休暇のルール等

イ)絶対に行ってはならないこと(服務規律)の明確化による秩序維持(予防的法務)
事業者が適正なサービスを提供する上でも、「絶対にやってはならないこと」を明示することは必須です。
一般的におこなってはならないことはもとより、介護事業者の運営規程を遵守するために、従業員の服務規律に定めるべきことは、抜け漏れなく記載します。

ウ)人員基準の常勤と非常勤の区分と労務管理上の雇用区分を混同しない
介護事業者では指定基準(人員基準)により、週の所定労働時間が常勤は32時間以上を常勤、それ以下を「非常勤」と扱っていますが、この考え方は、介護保険の運営基準にもとづくもので、日常的に、このワードが使われています。
この運用の延長上で生じている問題は、正社員に対する労働条件(処遇)と非正社員である、常勤パートさんに対する労働条件(処遇)が混乱してしまっているケースを垣間見ます。

昇給や賞与、退職金、教育訓練の機会、福利厚生等の付与については、労働契約法やパートタイム労働法という法律の保護により、労務管理の状況や職務内容により、正社員と均衡処遇を求められる可能性があります。(ある日、常勤パートさんに正社員だけに適用するつもりだった退職金を請求される等)

このようなことからも、「常勤」と「非常勤」という人員基準上の区分でなく、正社員と非正社員としての雇用管理区分の違いを明確に分ける事が必要だと考えます。

尚、人材不足の解消や時間的制限のある従業員さんの積極活用の観点からは、例えば、「短時間正社員制度」の活用を可能にする就業規則を検討することも重要です。

エ)常時10人未満の事業場は週44時間の特例を検討する
いわゆる「小規模ディサービス」は一般的に、10人未満で運営をしている事業所が多数です。

労基法では、常時10人未満の事業場の週の法定労働時間は、「週40時間」でなく、「週44時間」とする事を認めています。
この特例を活用することで、人員基準を満たすシフト組が楽になります。
また一定の残業代の抑制効果もあります。
この特例は、「1ヶ月単位の変形労働時間制」を導入する事業所でも活用できます。

オ)管理者を労働基準法の管理監督者とする場合には、有効性を高める処遇とする
管理者が労働者である場合には、労働基準法の『管理監督者』として、残業代等の適用除外にしていることが珍しくありませんが、緻密な設計無しに、施設管理者の管理監督者性について法廷等で争われた場合には、有効性が非常に厳しいと評価せざる負えない処遇が目立ちます。労基署調査でも、管理監督者性が問われる場合がありますので、処遇を慎重に検討することが求められます。

カ)送迎をおこなう場合の取扱いを慎重に検討する
従業員に送迎を行わせたり、車両の持ち込みを行う場合には、事故予防と万が一事故が発生してしまった場合の対応方、付保状況等を規定を通じて予め定めておくことが不可欠です。

キ)訪問介護の場合には、移動時間の労働時間の取扱いに注意
労働時間は、指揮命令下になく、自由利用が保障されているなら、労働時間には該当しないという事になります。尚、最低賃金を上回る水準であれば、訪問介護の時間とは別に、時給を設定することも可能です。

トラブルの未然に回避の観点と、労基署の指導を受けないためにも、移動時間をどのように取り扱うのか、予め規定により明確化しておく事が必要不可欠です。

ケ)人材不足には非正規雇用と高齢者の活用ができる制度を作る
介護福祉士を中心に慢性的な人手不足が生じています。

その状況を改善する一つの方法が、人員基準を満たしつつ、パートさん等の非正規雇用者で対応する方法です。そのためには非正規雇用の処遇の整備やシフトパターンを就業規則により整備する必要があります。

【初回相談はいつでも無料 訪問相談も承ります】

当事務所では、介護事業者様の就業規則の作成支援を得意としています。
就業規則の作成を通じて、事業所様の業績の向上、労務管理上の課題の解決、労使トラブル予防等の労務リスクの回避を同時に目指します。

【実質費用負担「0」 介護事業者様 限定 助成金活用型 就業規則作成コンサルティング・サービス】

平成26年度に限り、国の介護事業者向けの助成金(中小企業労働環境向上奨励金)や東京都の助成金(ワークライフバランス推進助成金)等を活用することで、就業規則の作成報酬や処遇整備に要する費用、教育訓練に要する費用の助成を受ける事が可能です。

これらの助成金制度の活用により、多くのケースで、当事務所の就業規則の作成コンサルティング費用(通常15万円~50万円)の費用を実質的に、「0円」とすることが可能です。

【中小企業労働環境向上奨励金等の助成金 受給診断を実施中】

助成金の要件に該当するか否かについては、
①事業所が一定の要件をクリアしていること(※要件が細かいためここでは省略します。)
②助成制度が要求する雇用管理制度を就業規則に盛り込むこと
が求めれます。この助成金制度の活用を通じて就業規則により雇用管理制度を整備することは、介護事業者の課題を解決するための効果的な打ち手でもあります。

当事務所では、「受給可能性の診断」についても無料アドバイスを実施しています。
助成金は、平成26年度末で制度が打ち切りになる可能性が高い当事務所では、予想しています。
ご注意の上、早めのご検討をお願い申し上げます。