頻出する労使トラブル

このコンテンツでは、労務リスクを予防的に回避する事を目的として、頻出する、労使トラブルの事例毎に、会社が適切に対処していく為に、どのようなポイントに注意すべきなのかを明らかにしていきたいと思います。

「労使トラブルの争点」ごとに、労務管理上、注意すべきポイントを解説しています。

【1】雇い止め(契約社員などの契約更新の拒絶)

参考資料:「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(平成15.10.22厚生労働省告示第357号・平成20.3.1一部改定)

「○ヶ月契約の期間雇用」などの一定の期間を区切って雇用契約を、「有期労働契約」といいます。

有期労働契約では、「契約期間の満了時」に多くの労使トラブルが発生します。
特に多いのが、「契約更新と契約打切」を巡っての労使トラブルです。

一人の労使トラブルとの発生は、集団的な労使トラブルの発展に繋がる可能性がありますので、常日頃の労務管理の段階で、未然に労使トラブルの発生を抑制し、万が一発生した場合でも、会社の主張を正当に成しえるような備えをしておく事が重要です。

次の①~④の要件ついて十分な留意をする事が必要です。

①契約更新に関する明示

雇用契約を締結する際に、雇用契約書に次の事項を明示すること

ア)「有期労働契約の更新の有無
イ)「更新が有る場合には、その判断基準

②雇止めの予告

次のア)又はイ)に該当する者を有期労働者を雇止めする場合には、契約期間満了時の30日前に予告すること。(ただし予め契約を更新しない旨が明示されている場合には除かれます)

ア)契約を3回以上更新している者
イ)雇い入れの日から1年を超えて継続勤務している者

③雇止め理由証明書の交付

労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付すること。

④契約更新延長の努力義務

契約を1回以上更新し、又は1年を超えて継続雇用している労働者との契約を更新する場合は、契約期間を長くするように努めること。

(判例からの注意点)

更に、次のような①~④に該当する場合には、させてしまうため、「雇止め」が相対的に、困難になってしまいます。

①有期労働者が従事する業務内容が、臨時的なものでなく、恒常的なものである場合

②相当程度の反復更新が行われ、期間の定めのない契約と、実質的に異ならない
→東芝柳町工場事件(最一小判 昭49.7.22)では、5回~23回に渡って、更新されていたことから、「期間の定めの無い契約と実質的に異ならない」と判断されています。

③更新手続きが形式的に行われている場合
→契約期間が満了した際に、直ちに更新手続きを行っていない場合などは、更新手続きが形骸化していると判断されます。

④雇用継続を期待させる使用者の言動が認められる場合
→採用時に長期継続や本採用を期待させる言動があった事など

⑤同様の地位にある労働者

【2】管理監督者性と時間外割増手当の請求

「自分は管理監督者では無いので、残業代を支払ってください!」

このような請求にを回避するためには、どのような事に注意したら良いのでしょうか。

労基法41条2項では、「監督もしくは管理の地位にある者(管理監督者)について、労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外を認めています。
その「管理監督者性」の是非を争って、残業代の請求も含めた労使トラブルが増えています。

「経営と一体的な立場にある者」

これに該当するか否かは、「課長などの名称にとらわれず、その職務と職責、勤務態様、その地位にふさわしい待遇がなされているか否か等、実態に照らして判断すべき。

管理監督者性が否定されてしまうと、それに伴って、残業代支払いの義務が生じるため注意が必要です。

昭和22.9.13 基発第27号、昭63.3.14基発150号

本通達では、「経営と一体的な立場にある者」と位置づけられています。

これに該当するか否かは、名称に捕らわれず、その職務と職責、勤務態様、その地位にふさわしい処遇がなされているか否か、実態に照らして判断すべき」

管理監督者性(判例より)
次の①~⑤の要件を満たしているかで相対的に判断されます。

①労働者の職務の内容が、ある部門全体の統括的な立場にあるか
②部下に対する労務管理上の決定権について、一定の裁量権を有しているのかどうか
③部下に対する人事考課権限を有しているかどうか
④自己の勤務について自由権限があり、出退勤について就業規則上、及び実体上、厳格な管理を受けていない
⑤定期給与である基本給、役職手当等において、地位にふさわしい処遇がなされているかどうか
また、ボーナスなどの一時金の支給率、その算定基礎賃金等についても、一般労働者に比して優遇措置が取られているかどうか